「学校でコンピュータ、インターネットを」という時、私は、その目的によって、次の3つに分けられると考えています。
1つ目は、「パソコンやインターネットの仕組みを知る」ということ、
2つ目は、「パソコンやインターネットを活用し、ビジネスや生活に活用する」ということ、
3つ目は、「コミュニケーションのツールとして人と人との交流に活用する」ということです。
1つ目は、例えば、全商検定では「情報処理」の分野です。
パソコンの仕組み、インターネットの仕組みを知ることで、
次の2つ目、3つ目で、より効果的にパソコンやインターネットを活用することを考えると同時に、
例えば、何故、インターネットメールで半角カタカナは他人に迷惑なのか、などの事を理解することが、
大切であると思います。
2つ目は、パソコンの面では、全商検定では「ワープロ」や「コンピュータ利用技術」の分野です。
ワープロソフトや表計算ソフトなどを使ってビジネス活動に利用したり、
プレゼンテーションを行ったり、ということです。
しかし、私は、それだけではなく、例えば、
フォトレタッチソフトやドローソフトなどを使って各種デザインを行ったり、
或いは、作曲ソフトを使って作曲をしたり、それらを合わせてオーサリングしたり、
などということも、これに含まれると考えます。
これらの場合、大切なのは、
それぞれのソフトウェアのメニューやコマンドを山ほど覚えることそれ自体が決して最終目的なのではなく、
それぞれのソフトウェアを活用し、自分なりのビジネス、自分なりのデザイン、自分なりの音楽が作れなくては、
何の意味も無い、ということです。
その為には、メニューやコマンドなどの機能を知ることと同時に、
ビジネスやデザイン、作曲など、それぞれの知識を習得し、センスを磨くことが重要になります。
インターネットの面では、
何かを調べるために検索したり、ニュースの購読、各種チケットや宿の予約、など、
数え上げれば、きりがありません。
ここでは、1つ目の知識と社会的な常識を考えあわせていくことになると思います。
3つ目は、 これまで、電話や手紙で行っていたことを、パソコンやインターネットを活用し、 学校間交流、国際交流などに取り組んでいこう、ということです。 その時には、1つ目や2つ目の知識、経験や、他教科の知識も合わせながら、 これから、あちことで行われていくと思います。
「学校にパソコン、インターネットを」と叫ばれて久しいです。
けれども、だからといって、
なんでもかんでも全てをパソコンやインターネットですれば良いとは考えません。
「電卓が有るから計算能力なんて必要ない」とか、「ソロバンはもう古い」などとは、決して思いません。
パソコンやインターネットは、今や自動車と同じ位に生活に溶け込んで来ている便利な道具ですが、
交通法規や目的地の道路事情が判らない人間が自動車を要領よく安全に運転出来ない様に、
論理的な計算方法を知らない人間がパソコンに要領の良い計算をさせられる筈がありません(注:私がそうです)。
デザインの知識を知らない人間がドローソフトを使い、テクニックを駆使してデザインしても、
それは、目新しいだけの作品で、人の心に訴えるものにはなりません(注:私がそうです)。
両方が合わさってこそ、意味があるのです。
学校は、パソコンやインターネットを、
「使うべきところ」「あえて使わないところ」を慎重に検討し、
「使うべきところ」は、きっちりと使っていかなければならないと切に感じます。
目新しいことだけを何でもかんでも詰め込んで、 下地になる部分に対して、「単位数が少ないからそれは出来ない」というのは、 高校としては、何だか、違和感を感じます。
パソコンは使えるけれどデザインセンスの無い私の「商業デザイン実習」の授業に、 パソコンは苦手な美術の教諭が関わることで、 素晴らしいIllustratorの生徒作品が出来上がります。 インターネットは使えるけれど英語の出来ない私に、 インターネットは苦手な英語の教諭が関わることで、 素晴らしい国際交流が生まれます。 そんな人たちが集まれば、もっともっと素晴らしいことが出来ると思います。 全ての教科の授業の知識や技術、経験の積み重ねの上に、パソコンやインターネットが有ると思います。
( '02/02/11 記す )